前回、「結束」という言葉を説明すると書いてしまいました。
とても面倒なので後悔していますが、丸二の時刻表示を語るからには避けて通ることはできません。
時刻表示のルールについては、本池さんの論文に詳細な記述があります。
大変な力作です。東京のほぼ全ての局の時刻表示が明快に解明されました。
簡単に言うと、各局間の郵便物伝送のタイムスケジュールに合わせて表示時刻が設定されている ― という結論です。
「結束」はこのタイムスケジュール(列車のダイヤ表と同じもの)のことで、郵便業界用語です。
私も、この時期の結束表は見たことがありませんが「詳説」に明治38年2月の表が掲げられています。
近デジでは、捜し方が悪いのか見つけられませんでした。
少し時代がさがって、大正4年4月の名古屋遞信局管内のものが偶々手元にあります。
(部分拡大)
この時代になると、鉄道を活用していることが良く分かります。
ヤフオクの落札品が我が家に届く速さを見ると、やはり宅配便より郵便の方が1日速いようです。
ただ、郵便の結束はその分非常にタイトに、山手線のラッシュ時ダイヤみたいになっています。
ですから、ネット(2ちゃんねる等)で見ることのできる現場の声は不平不満が充満していて革命前夜の様相を呈し ― この辺でやめときます。
さて、リーフは手元の丸二消しの中で数の多そうなものから選んでみました。
麴町局⇒東京局です。
「詳説」で解明されていますが、東京市内の結束は丸二使用期間中に5回改正があります。
そのなかで、集めやすかった第II期のものです。
計12回/日の伝送を並べてみました。
やはり予想どおり良い結果は出ません。丸二の年月日・時刻の判るものなら何でも―という集め方では偏りが出ます。
昔、「大きな局の丸一ではヲ便よりロ便の方が少ない」という話を聞いたことがあります。
なるほど、商用便・個人便の別なく、朝から手紙を書いて投函は昼以降のケースがほとんどでしょう。
無作為に集めると、12回の伝送ではそのことが見事に反映されてしまっています。
最下段には、例外時刻と呼ばれているものを並べてみました。
正月は特別の結束を組んだのでしょう。これは判りやすいです。
東京局の3枚(右端の苦し紛れの疵物を含めて)は由来不明です。恐らくは到着便に関わる時刻設定でしょう。
― 先に御覧いただいた赤坂局の郵便料金取立書などです。
最下段中ほどの麴町局「后 9 1/6」については、丸一ファンの方には判りやすいと思います。
「ワ便」の使われ方を想起するのが早道です。
丸二使用開始の公達(明治33年12月28日公達第768號)では、
「時分ハ配達時刻毎ニ之ヲ改植シ其ノ最終ノ配達時刻ヨリ後ハ翌日第一ノ配達時刻ニ改植スヘシ」
と定められています。
丸一では、
「最終ノ配達時刻ヨリ以後ハ最終便號ノ外尚之ニ次クヘキ一ノ便號ヲ設ケ使用スヘシ」
と定められています。(明治25年12月10日公達第433號)
丸二は活字やアラビア数字の使用、実時刻の表示など、合理性を追求して止まない斬新な発想に溢れてはいますが、実態を考慮しない中央官僚の勇み足もあったようです。
時間外に窓口で受け付けた書留便にルールどおり翌日日付に改植した消印を押せば、差出人は不思議に思うことでしょう。
結局現場では、公達を無視してワ便に相当する「后 9 1/6」を局の内部で使用して混乱を防ぎました。
先に御覧いただいた15支局のなかの「8 駒型日付の異型配列」にも麴町局の「后 9 1/6」を2枚並べています。
ともに5銭切手であることからも、この遅い時刻の使われ方が想像できます。
表示時刻と伝送便とを一対一で対応させるという発想は残ってしまったのです。素よりこれは責められるべきことではありません。
結束と引受時刻表示とを全く切り離してしまう ― そんなに大きな発想の転換など、突然できるものではありません。
櫛型の時代の初期まで、この発想が残っていたかもしれません。
伝送便数の多い東京市内二等局(=旧支局)がX1を使用したのは多分にこのことを反映しているのではないでしょうか。
と、感想の駄文は長いのですがリーフはシンプルです。そして穴だらけです。
でもまあ、これだけ多くのことを考えさせてもらえるなら作り甲斐だけはあったと満足しています。
【自己評】また、そのうち同じレイアウトで支局同士の伝送も頑張ってみたいですね。
Epsonのオフィス用スキャナで赤色の発色抑制について試行錯誤していますが、今度は青が勝ちすぎています。
使用法に慣れるまで今しばらく我慢してお付き合い願います。
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